2017年7月11日 更新

誰かを誘うのが苦手だから、レンタルフレンドを利用して相席屋に行ってみた

朝井麻由美 ライター・編集者・コラムニスト。

誰かを誘うのが苦手だから、レンタルフレンドを利用して相席屋に行ってみた

誰かを誘うのが苦手だ。

飲みに行こう、の一言すらとんでもなくハードルが高い。

誘ってもいいものか何時間も悩んだ挙げ句、結局誘わないことのほうが多い。

まず、人を誘うには

「誘いたい気持ち」

    と

「誘われて嬉しい気持ち」

が相思相愛でなければならない。

この時点でもう難しすぎる。

相思相愛がどれだけ難しいことかは、この20年、aikoが散々歌ってきた。

aikoは20年間も「あなたの指先に触れられないあたし」を詞とメロディーに乗せ、
支持されてきたのだ。

私が「あなたをうまく誘えないあたし」であっても何らおかしくない。

まず、誘ってもいいのかと悩み、どこかへ行こうと誘ったら誘ったで

「ここに行きたい」と本当に思ってくれているのかと悩み、

行ったら行ったで楽しいと思ってくれているのかと悩み、

と最初から最後まで悩み続けることになる。


そういう理由で、人を誘わずに一人でいたいと思ってしまうのだが、

どうもここ数年流行っている「レンタルフレンド」というサービスが、

こういった悩みを持つ人に向けて展開しているビジネスだと知った。

お金を払って「友達をレンタル」することで、レンタルしている時間だけは、

気持ちの良い友達として接してくれるのだという。

友達がいなくて悩んでいる人や、行きたい店に一緒に行ってくれる人がいない、

などが主なユーザー。

レンタル主のことを決して否定せず、

仲良く盛り上げるようにマニュアルで決められているため、
気疲れしない話し相手としてリピーターも多いらしい。

そこで、レンタルフレンドサービスを利用してみることにした。

日時と場所を指定し、来てほしい人の見た目やタイプなどに要望が
あれば予約の時点で相談すると、希望に最も近い登録スタッフを派遣してもらえる。

4月某日、待ち合わせ場所に「ハルカ」と名乗るレンタルフレンドがやってきた。

▽レンタルフレンドのハルカさん
 (3543)

 20歳のハルカさんは最近大学に入学したばかり。

入学早々、なぜレンタルフレンドなどという妙なバイトをしているのだろう。

 今回、私はレンタルフレンドに、「飲み屋で私が喋らなくても勝手に会話を盛り上げてくれる人」という要望を出していた。

「相席屋」に行こうと思っていたのだ。
「相席屋」とは、女性同士、男性同士でやってきたお客さんが、

同じテーブルに案内されるシステムのお店。

3年前にオープンして以来、全国各地の店舗で婚活や友達作りのために利用されている。

1名での入店はできないこと、人見知りなこと、一緒に行く友達もいないこと、
あらゆる条件が重なって一度も行ったことがなかったのだ。

レンタルフレンドが場を盛り上げてくれるならば、こんなラクなことはない。

▽相席屋
 (3545)

店に入ると、4名がけのテーブルに案内された。

ここへ男性2名客がやってくるらしい。

しばらくすると、白いタンクトップを着たガタイのいい2人組がやってきた。

2人とも眉毛がじょりじょりと剃られていてほとんどない。

ジムで筋トレをしてからこの店に来たと言っている。

筋トレで健康アピールをしたって無駄だ。

私は眉毛がない人は信用しないと決めているのだ。

眉毛の濃さと誠実さは比例すると本気で思っている。

手入れされていないありのままの眉毛を見ると、

ああ、この人は普通に授業を受けて、普通に受験をして、普通に働いているのだな、と安心する。

眉毛にかまけている暇がなかったくらい、日々真面目に生きてきたのだな、と。

▽お客さんの顔は写せないため、手元のみ
 (3547)

 (3550)

 眉毛のないタンクトップ2人は、トレーニングの話ついでに、筋肉自慢を始めた。

これはいわゆる、「筋肉すごーい!」と言わなければならない流れである。

たくましい筋肉にそっと触れられたら上級者。

この人はたぶん普段から、筋肉を見せた際にタッチされるかどうかで

いけるいけないを判断しているに違いない。

右手でマッスルポーズを作り、力こぶをボコッと出すタンクトップ男。

レンタルフレンドのハルカさんは、きちんと「すごーい」とおだてている。

さすがに力こぶは触っていなかった。タンク男は内心さぞ残念だったことだろう。

▽筋肉をおだてるレンタルフレンドのハルカさん
 (3549)

▽眉毛はないけど筋肉はあるタンクトップ男たち
 (3552)

筋肉に対する私の「すごーい」が棒読みだったからなのか、彼らはテーブルを立つ直前、ハルカさんのみに連絡先を聞いていた。

やっぱり、眉毛のない人にろくな奴はいない。

▽やっぱり眉毛理論は正しいのだ
 (3554)

 眉毛がないというだけで早々に心を閉ざした私に対し、

ハルカさんは完璧なレンタルフレンドぶりであった。

私が下を向いてもそもそとご飯を食べたり、
この記事のための写真を撮ったりしている間に、ハルカさんはひたすら喋り続けていた。

「最近カメラを買ったみたいで、どこでも撮ってて~」、

「今日も私が被写体をやってたんですよ~」

などとさらりと場を繋いでくれるのだ。

確かに私のカメラは最近買い替えたものだし、

ついさっき、店に来る前にハルカさんの写真を撮ったので「被写体」というのもあながち間違ってはいない。

 もし、ハルカさんが本物の友達だったら、

場を繋ぐことに負担をかけすぎていて申し訳なく思っただろう。

けれど、もともとそういうオーダーでレンタルしている分、気負いがなくなる。

それを「フレンド」と呼んでいいのかどうかは微妙なところだが、レンタルフレンドに一定数の需要があることはよくわかった。

 連絡先も知らなければ、そもそも本当に「20歳のハルカ」さんだったのかすら、

正直わからない。

けれど、一緒にいた時間は確かに「友達」だった。

店を出て、私は駅の北側へ、ハルカさんは南側へと進む。もう二度と会うこともないであろう「ハルカさん」の背中を見送ったのだった。


■今回フレンドをレンタルした会社
ファミリーロマンス
※レンタルフレンドのほかにも、父、母、夫、妻、兄弟、子ども、恋人のレンタルもできる。

■お知らせ
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プロフィール

朝井麻由美
ライター・編集者・コラムニスト。著書に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA/中経出版)。一人行動が好きすぎて、一人でBBQをしたり、一人でスイカ割りをしたりする日々。

書籍情報

一人遊びを一冊にまとめた書籍『「ぼっち」の歩き方』( https://www.amazon.co.jp/dp/4569830382/
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桜木ピロコという名前で本を書いたりコラムを書いたりしています。代表作は『肉食系女子の恋愛学』(徳間書店)。肉食系女子は私がつくりました。

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